電気工事士は国家資格で、電気工事を行う場合には関連する法律がいくつかあります。
電気工事に関するものとして電気保安四法と呼ばれる4つの法律があります。電気事業法、電気工事士法、電気工事業法、電気用品法の4つです。
第二種電気工事士の筆記試験では法令問題も出題範囲に含まれています。試験に合格するだけではなく、実際の工事の時に遵守する内容として把握しましょう。
法律って難しい・・
そうだね。
試験では内容をすべて把握する必要はないけど、試験以外でも必要だから覚えておこう。
すべての内容が第二種電気工事士に関わるわけではありませんが、電気工事・作業に関連する項目があるので細かく確認しておきましょう。
試験の勉強範囲としての理解も重要ですが、法律なので実際の電気工事には遵守してを作業をおこなってください。
電気事業法
電気事業法は電気事業、電気工作物の工事や保安に関する法律で、一般電気工作物と事業用電気工作物の2つの分野の内容が記載されています。
電気工作物とはすこし難しい言葉ですが、電気を供給する発電所・ダム・変電所・電線や工場・ビル・住宅などの電気を受け取る受電設備、屋内の配線や電気を使う設備の総称です。
試験では電気工作物は電気を作る設備と送る設備(送電線・配線)、受け取る設備と考えて問題ないと思います。
事業用電気工作物は電気会社などの電気事業者の設備とビルや工場などで受電する自家用電気工作物に分かれています。
一般用電気工作物
第二種電気工事士の工事範囲は一般電気工作物です。
一般用出来工作物とは電気事業者から交流600V(直流750V)以下の低圧で電気の供給を受ける設備と規定されていて、発電機能をもっているものは自家用電気工作物に分類されますが、小電力発電設備を同一構内に設置する場合であれば一般用電気工作物となります。
小電力発電設備は出力の合計が50kW以下のものが該当します
- 太陽光発電
- 風力発電
- 水力発電(ダムは除く)
- スターリングエンジン発電機
- 燃料電池自動車(家庭に給電するもの)など
作業範囲は出題される場合があるので忘れないようにしっかり覚えてください。
事業用電気工作物
第二種電気工事士の範囲外ですが、事業用電気工作物は2つに分類されます。
事業用電気工作物
- 発電所
- 送電施設
- 変電所など
- ビル、工場等600Vを超えた電圧で受電する設備
- 自家用発電設備など
電気事業法のポイント
- 第二種電気工事士が対応できるのは一般用電気工作物
- 直流750V、交流600V以下で受電するもの
- 50kW以下の小電力電気工作物で同一構内なら一般用電気工作物
電気工作物の名前や単位は覚えにくいですが、試験でも出てくる範囲です。覚えておきましょう。
電気工事士法
電気工事士法は電気工事をするうえで欠陥による災害(感電や火災事故)の発生防止を目的とした、電気工事士が適正な電気工事を行うように指導監督する法律です。
電気工事士法
(目的)
第一条 この法律は、電気工事の作業に従事する者の資格及び義務を定め、もつて電気工事の欠陥による災害の発生の防止に寄与することを目的とする。
引用元:e-Gov | 電気工事士法
第一種・第二種電気工事士の両方の内容を含んでいて、工事欠陥による各種災害を防止するため電気工事をする人を制限しています。
また、電気工事士のおこなう作業範囲、免状の取り扱い、資格試験についても電気工事士法で定められています。
電気工事士の義務
電気工事士は電気工事士法に定められた内容を守る義務があります。
電気工事士の作業範囲は
第三条
第一種電気工事士免状の交付を受けている者(以下「第一種電気工事士」という。)でなければ、自家用電気工作物に係る電気工事(第三項に規定する電気工事を除く。第四項において同じ。)の作業(自家用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事してはならない。
2
第一種電気工事士又は第二種電気工事士免状の交付を受けている者(以下「第二種電気工事士」という。)でなければ、一般用電気工作物に係る電気工事の作業(一般用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。以下同じ。)に従事してはならない。
引用元:e-Gov | 電気工事士法
第一種電気工事士は自家電気工作物・一般用電気工作物の電気工事はできますが、第二種電気工事士は一般用電気工作物の作業しかできません。
一般用電気工作物は電気事業法の内容を確認してください。
電気設備技術基準に適合するように作業をしなければいけない
第五条
電気工事士、特種電気工事資格者又は認定電気工事従事者は、一般用電気工作物に係る電気工事の作業に従事するときは電気事業法第五十六条第一項の経済産業省令で定める技術基準に、自家用電気工作物に係る電気工事の作業(第三条第一項及び第三項の経済産業省令で定める作業を除く。)に従事するときは同法第三十九条第一項の主務省令で定める技術基準に適合するようにその作業をしなければならない。
引用元:e-Gov | 電気工事士法
作業は適当にしてはいけません。電気工事は事故・災害が発生しやすい作業であり、作業後に利用するかたにとっても安全に使ってもらえるように作業しなければいけません。
電気工事士でなくてもできる軽微な作業
経済産業省のページには以下のように記載があります。
なお、次に示す軽微な工事については電気工事士法施行令第1条で電気工事から除外されているため、電気工事士等の資格は不要です。
引用元:経済産業省|電気工事の安全
- 差込み接続器、ねじ込み接続器、ソケット、ローゼット、その他の接続器又はナイフスイッチ、カットアウトスイッチ、スナップスイッチその他の開閉器にコード又はキャブタイヤ ケーブルを接続する工事
- 電気機器(配線器具を除く。以下同じ)の端子に電線(コード、キャブタイヤケーブル及びケーブルを含む。以下同じ)をネジ止めする工事 等
軽微な作業も分類として理解しておくことをオススメします。
電気工事の作業に従事するときは免状を携帯する
第五条
2 電気工事士、特種電気工事資格者又は認定電気工事従事者は、前項の電気工事の作業に従事するときは、電気工事士免状、特種電気工事資格者認定証又は認定電気工事従事者認定証を携帯していなければならない。
電気工事士であっても免状を携帯しておかなければ作業をしてはいけません。車の運転でも運転免許証の携帯義務がありますので同様です。
試験では免状携帯についても出題される可能性があります。
基本なので覚えておきましょう。
免状の発行は各都道府県でおこなう
第二種電気工事士は国家資格ですが、免状の発行は各都道府県ごとに行われます。免状を発行する組織も都道府県ごとに異なり、場合によっては外部団体に委託されている場合があります。
発行費用は概ね統一されていて「5,300円」です。
ただし、都道府県によっては住民票等の提出を求められるので、免状申請費用以外に金額が発生する場合があります。申請の際には必要な金額を確認してください。
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免状の更新
第二種電気工事士の免状には有効期限はありません。ただし、免状の携帯義務がありますので免状の紛失や破損の場合には再発行の申請をしましょう。
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電気工事士法のポイント
- 電気工事の欠陥による災害の発生を防止を目的としている
- 電気技術基準に適合するように作業する
電気用品安全法
電気用品安全法とは電気工事を行う際に使用する電気用品の製造・販売などを規制し、電気用品による事故・災害を防止することを目的とした法律です。
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、電気用品の製造、販売等を規制するとともに、電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進することにより、電気用品による危険及び障害の発生を防止することを目的とする。
引用元:e-Gov | 電気用品安全法
製造・輸入には届け出が必要
電気用品を製造したり輸入する場合には経済産業省への届け出が必要です。
第三条
電気用品の製造又は輸入の事業を行う者は、経済産業省令で定める電気用品の区分に従い、事業開始の日から三十日以内に、次の事項を経済産業大臣に届け出なければならない。
引用元:e-Gov | 電気用品安全法
勝手に海外からオシャレなランプやスイッチを輸入してはいけません。
PSEマーク
電気用品の技術基準に適合した電気用品には「表示」を付けるように義務付けられています。
また、技術基準に適合した「表示」を勝手に付けることは禁止されています。
第十条
届出事業者は、その届出に係る型式の電気用品の技術基準に対する適合性について、第八条第二項(特定電気用品の場合にあつては、同項及び前条第一項)の規定による義務を履行したときは、当該電気用品に経済産業省令で定める方式による表示を付することができる。
2
届出事業者がその届出に係る型式の電気用品について前項の規定により表示を付する場合でなければ、何人も、電気用品に同項の表示又はこれと紛らわしい表示を付してはならない。
引用元:e-Gov | 電気用品安全法
技術基準に適合した「表示」は通称PSEマークと呼ばれています。
PSEマークには2種類あり、「特定電気用品」と「特定電気用品以外の電気用品」があります。
特定電気用品
常に電圧がかかる用品につけられています。
主な特定電気用品
- 絶縁電線
- キャブタイヤケーブル
- コード
- ヒューズ
- スイッチ類
通常はマークが記載されますが、記載できない場合には文字で「<PS>E」と記載されます。
特定電気用品以外の電気用品
主な特定電気用品以外の電気用品
- ライティングダクト
- 変圧器
- テレビ
- 換気扇
- リチウムイオン蓄電池
等です。
通常はマークが記載されますが、記載できない場合には文字で「(PS)E」と記載されます。
電気用品安全法のポイント
- 電気用品の製造・輸入には経済産業省への届け出が必要
- 電気工事を行う場合にはPSEマークのない電気用品を使ってはいけない
- PESマークには「特定電気用品」とそれ以外の2種類がある
最近はインターネットで海外製のスイッチなど販売しているところがあるようですが、PSEマークの無いものは本来販売できません。
輸入の許可を得ているかどうかは判断できない場合もあるかもしれませんので購入は控えましょう。
もちろん、PSEマークの無い電気用品を使うことも禁止です。
電気工事業法
電気工事業法(電気工事業の業務の適正化に関する法律)は電気工事を仕事としておこなう事業者(法人・個人事業主)に対して適正な電気工事を行うよう指導監督する法律です。
電気工事会社を独立開業しようと考えている方にはとても関係がある法律ですが、筆記試験でも法律の内容から出題されますので、内容は頭に入れておきましょう。
第一章 総則
第一条
この法律は、電気工事業を営む者の登録等及びその業務の規制を行うことにより、その業務の適正な実施を確保し、もつて一般用電気工作物及び自家用電気工作物の保安の確保に資することを目的とする。
引用元:e-Gov | 電気工事業の業務の適正化に関する法律
第二種電気工事士試験によく出題される内容をまとめていきます。
電気事業者の登録が必要
電気工事業(電気工事を行なう事業)を行う際には申請が必要です。複数の都道府県に営業所を設置する場合には経済産業大臣、1つの都道府県内にだけ営業所を設置する場合には都道府県知事への登録が必要です。
また登録電気工事事業者の登録有効期限は5年です。
もし、登録の変更・廃止を行い場合には30日以内に届け出が必要です。
電気工事業者の業務に関する規制
主任電気工事士を決めないといけない
営業所ごとに主任電気工事士を設置しなければいけません。主任電気工事士は第一種電気工事士または3年以上の実務経験をもつ第二種電気工事士でなければいけません。
第二種電気工事士で独立を考えているなら3年の実務経験をつんで主任電気工事士の資格を持っていないと独立できないということです。
資格のない者に仕事をさせてはいけない
登録電気工事業者は、第一種電気工事士又は第二種電気工事士でない者に一般用電気工事の作業をさせてはいけません。
PSEマークがついていない電気用品を使ってはいけない
第二十三条
電気工事業者は、電気用品安全法第十条第一項の表示が付されている電気用品でなければ、これを電気工事に使用してはならない。
引用元:e-Gov | 電気工事業の業務の適正化に関する法律
電気用品安全法でも記載がありましたが、電気工事業法でも禁止されています。
営業所ごとに、絶縁抵抗計などの器具を備えなければならない。
電気事業法では「営業所ごとに、絶縁抵抗計その他の経済産業省令で定める器具を備えなければならない。」と記載があります。
第二種電気工事士に関わる一般電気工作物の電気工事を行う場合には絶縁抵抗計、接地抵抗計、回路計を営業所ごとに備えて置かなければいけません。
(器具の備付け)
引用元:e-Gov | 電気工事業の業務の適正化に関する法律
第二十四条 電気工事業者は、その営業所ごとに、絶縁抵抗計その他の経済産業省令で定める器具を備えなければならない。
営業所(事業所)・現場ごとに標識を掲示する
(標識の掲示)
第二十五条
電気工事業者は、経済産業省令で定めるところにより、その営業所及び電気工事の施工場所ごとに、その見やすい場所に、氏名又は名称、登録番号その他の経済産業省令で定める事項を記載した標識を掲げなければならない。
引用元:e-Gov | 電気工事業の業務の適正化に関する法律
営業所ごとに帳簿を整え、5年間保管する
作業の記録として帳簿を備え、以下の項目を記載する必要があります。
- 注文者の氏名または名称および住所
- 電気工事の種類および施工場所
- 施工年月日
- 配線図
- 検査結果
- 主任電気工事士及び作業者の氏名
(帳簿の備付け等)
第二十六条
電気工事業者は、経済産業省令で定めるところにより、その営業所ごとに帳簿を備え、その業務に関し経済産業省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。
引用元:e-Gov | 電気工事業の業務の適正化に関する法律
何かあったときのため電気工事の記録を遡れるよう保管しておきます。
電気に関する法律のまとめ
第二種電気工事士試験では筆記試験で法律の中身についての問題が出されます。
法律の名前は出題されませんが、制度や義務など電気工事及び電気工事士として守らなければならない内容が定義されています。
- 電気事業法
- 第二種電気工事士の工事範囲は一般電気工作物
- 交流600V(直流750V)以下の低圧で電気の供給を受ける設備
- 50kW以下の小電力電気工作物
- 電気工事士法
- 電気設備技術基準に適合するように作業をしなければいけない
- 電気工事の作業に従事するときは免状を携帯する
- 電気用品安全法
- 製造・輸入には届け出が必要
- PSEマークのない電気用品を使ってはいけない
- PESマークには「特定電気用品」とそれ以外の2種類がある
- 電気工事業法
- 電気工事業をおこなうなら電気事業者の登録が必要
- 主任電気工事士を決めないといけない
- 資格のない者に仕事をさせてはいけない
- PSEマークがついていない電気用品を使ってはいけない
- 営業所ごとに、器具を備えなければならない
- 標識を掲示する
- 営業所ごとに帳簿を整え、5年間保管する
法律は知らなかったでは済まされません。しっかり内容を把握して試験に望み、実際の電気工事の際にも遵守して行うようにしましょう。
筆記試験の対策には、参考書を購入して対策をします。
筆記試験対策の参考書を比較した記事もありますので、受験するときの参考にしてください。
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